千客万来


数年前からフルタイムで音楽をやり始めて、以前の会社勤めをしていた頃の、利潤に基づいていた人たちとは、潮が引くように音信が途絶えた。逆に、新しい友人ができたり、交信の機会が増えた旧友も多いから、千客万来だ。 

 

技術者としてのキャリアの中で、自分の責任で決断でき、世界を相手に仕事が出来たと感じた時期が何年間かあった。そのときは、当時の上司と、そのまた上司の二人との関係が良好で、自由度が高かった。自分で一番、仕事の脂の乗った時期だった。アメリカに来て、それが経験できただけでも幸運であった。 

 

しかし、浮き沈みの激しいハイテク業界の中、その会社は他社に買収され、新しいマネジメント・チームが乗り込んできた時に、僕は転職を選んだ。このシリコンバレーは、成功の欲望が渦巻く街である。ある意味では、一攫千金を夢見る人間が集まるギャンブルの街、ラスベガスにどこか共通するところがある。 

 

今にして思うと、若い頃から僕は長いものに巻かれるのが嫌だった。企業で生き延びるのに要る、世渡りの上手さにも全く欠けていた。勤め人であるにもかかわらず、組織になじまず、自分のわがままを通してきたから、和と服従を尊ぶ日本には居れなかったわけだ。 

 

今は、音楽をやりながら、自由を満喫している。その反面、仕事としてバンド活動を続けていくために、常に目に見えない大きな壁に直面して、いかにそれを乗り越えるか悩んでいる。が、それまでの2足のワラジを脱ぎ、自由になる時間を買った感がある。当たり前だが、あるのは結果だけで、水面下の努力など誰でもやっていることなのだ。

 

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