日本ツアーで受けたスタンディング・オベーション


この数年の間に自分のブルースバンドを率いて日本ツアーを何回か行ったが、これまでは、ツアーの費用の赤字をせいぜい最小限に抑えるだけの、バンドのプロモーションが目的であった。

 

が、前回のツアーでは満員御礼が2回あり、しかもそのうち1回名古屋では、アンコール後にスタンディング・オベーションを受けた。そのときは外国人のお客さんが多かったこともあるだろうが、自分の経験では、日本のライブハウスのブルース・ショーでスタンディング・オベーションなど見たことも聞いたこともない(ビッグネームの外タレで、最初から立見席の場合を除いては)。

 

このときは、ベースが京都の山田晴三氏で、ドラムがアメリカから同行したトビア・ブラッドレー嬢という、パワフルなリズム・セクションだった。名古屋に行くのは初めてで、演奏するほうも、観るほうも先入観が何も無かった。

 

最後の曲を演奏し終えて、ギターのコードを抜こうと僕がステージ後ろのアンプに近づいたときだった。ドラムのトビアがこちらに向かって、客席の方を見てみろと目配せしていたので、振り向いたら、お客さんが総立ちでこちらに熱い拍手を送っていたのだ。

 

また、たわけたことをたいそうに吹聴していると言われそうだが、これは自分にとっては幾つかの意味合いがある:

 

(1)ひとつには、これは自分のリーダー・バンドであり、有名人のサイドマンとして参加したショーではなかったということだ。

 

(2)さらに、アンコールに僕はスロー・バラードを選んだ。自分の編曲でメドレーにしたものだが、歌をじっくり聴かせる構成だ。お客さんがノッているところに、テンポの遅い曲で勝負するのは、賭けであった。

 

アメリカに移住して長年細々とこれまでやってきた音楽が、この瞬間に日本でも受け入れられた気がした。この調子で、今後も弾みがついていくことを願っているが、日本のブルース・マーケットは、概して強い向かい風が吹いている。

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