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明日5月18日(木)から始まる日本ツアー 

 

一年ぶりの日本でのライブハウスツアーが、明日18日(木)東京から始まる。予定通り今日、サンフランシスコ空港から、成田に着いた。 

 

今回のプログラムは、自分がブルースをやり始めた頃の原点に戻って、シカゴブルース三昧(ざんまい)だ。 

 

特にシャッフルをダウンホームな感じで演りたいので、他の面々も、相当な“好きモン”の方々にお願いした。自身のブルースハープと、スライドギターも前面に押し出すから、コテコテ・ネバネバ感が以前よりいっそう出るだろう。 

 

移動の先々でバンドのメンバーを替える場合、音合わせの時間はせいぜい、ライブ当日の数時間に限られる。にもかかわらず、現地のミュージシャンの方々の演奏の完成度の高さには、いつも感心させられる。 

 

ツアースケジュールとサポートメンバーは、以下の通りです。よろしくお願いします。 

 

5月18日(木) 東京 ブルーヒート: 小出斉 (g)、松本照夫 (d)、倉本巳典 (b) 

5月20日(土) 名古屋 スローブルース: 羽田 ひとし (d), ミッキー井藤 (g)、藤村とおる (b) 

5月21日(日) 大阪 堺レッドハウス 4pm-6pm: 畑ひろし (g)、東ともみ (b)、Takagiman (d) 

5月22日(月) 大阪 シカゴロック: 畑ひろし (g)、東ともみ (b)、Takagiman (d) 

5月24日(水) 京都 磔磔: 畑ひろし (g)、東ともみ (b)、高野秀樹 (d)

 

この春の日本ツアーの次にあるもの 


2013年に行き始めた日本ツアーも今年で4年目に入る。当初は出身地である関西を中心に始めたのだが、今や中部・東京にも足を延ばすようになった。ここまで来れたのも、お世話になった現地のミュージシャンや、ライブハウスのスタッフの方々はもちろん、何よりも自分の演奏を聴きに来てくださったファンのサポートがあればこそだった。 
 

来週始まる短い日本ツアーが終わるとすぐ、6月に数週間ほどシカゴに滞在する。これは、ブルースのメッカであるシカゴへの自分なりの ”巡礼” といえる。30年前にアメリカに移住して以来初めて、今回少しまとまった時間シカゴに滞在することになる。 
 

が、その後さらにそこに長居をするかどうかは、行ってみないとわからない。果たして、そこに住みたいと思えるほどのインパクトや機会が、現時点であるだろうか。いずれにしても、シカゴ行きは自分の中で、長い間くすぶって来た課題であり、避けられない道だった。 
 

もう一つ最近の心境の変化といえば、これまでずっとバンド形式でブルースを演ってきたが、このごろは少人数で、例えばデュオでやるアコースティックな音の空間が心地良くなってきたことだ。ドラム無しでは、音が丸裸になるので、自分のリズム感の確かさと、隙間を埋めるギターのセンスが問われる。 
 

いずれはソロの演奏も視野にいれるとするか。まだまだやり残していることはあるので、これからも成長あるのみ。

 

春の日本ツアー 2017 Japan Tour in Spring 


春の日本ツアーまでもう少し。5月18日(木)東京を皮切りに、名古屋、京都、大阪で計5回のライブ。 


いつものように、今回もネタを大幅に入れ替えます。ギターだけでなく、自身のブルース・ハープとスライド・ギターも前面に押し出し、ルーツのシカゴ・ブルースをさらに掘り下げます。 
 

ツアースケジュールとサポートメンバーは、以下の通りです。各地で強力な面々を揃えています。日本の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。 
 

5月18日(木) 東京 ブルーヒート: 小出斉 (g)、松本照夫 (d)、倉本巳典 (b) 

May 18 Thu; Tokyo Blue Heat: H. Koide (g), T. Matsumoto (d), M. Kuramoto (b) 
 

5月20日(土) 名古屋 スローブルース: 羽田 ひとし (d), ミッキー井藤 (g)、藤村とおる (b) 

May 20 Sat; Nagoya Slow Blues: H. Hada (d), M. Ito (g), T. Fujimura (b) 
 

5月21日(日) 大阪 堺レッドハウス 4pm-6pm: 畑ひろし (g)、東ともみ (b)、Takagiman (d) 

May 21 Sun; Osaka Red House: H. Hata (g), T. Azuma (b), Takagiman (d) 
 

5月22日(月) 大阪 シカゴロック: 畑ひろし (g)、東ともみ (b)、Takagiman (d) 

May 22 Mon; Osaka Chicago Rock: H. Hata (g), T. Azuma (b), Takagiman (d) 
 

5月24日(水) 京都 磔磔: 畑ひろし (g)、東ともみ (b)、高野秀樹 (d) 

May 24 Wed; Kyoto TakuTaku: H. Hata (g), T. Azuma (b), H. Takano (d)

(写真下は、一昨年の大阪シカゴロックより、右は畑ひろし氏。今回も共演します!)


 

アメリカに来て得たもの 


日本からアメリカに移住して以来、今年で30年目になる。その間にずっと、細々ながら好きなブルースを続けてきた。自分のリーダーバンドを持って、フルタイムで音楽をやることに踏み切ってもうしばらくになる。 
 

当初、留学生としてアメリカに来たときは、何の将来の保証もなかった。これまでいろいろな障害にぶち当たりながら、ジグザグの道をたどってきたが、推進力は常に前を向いていた。 
 

今思い返しても、当時、留学を終えて米国滞在ビザが切れる直前に、偶然にも現地で昼間の仕事が見つかったのは、その時まさに神風が吹いた感がある。その後に繰り返した転職と引越しの多くは、生き残るための手段であった。
 

音楽的に良かったことは、一言に凝縮すると、自分が歌うブルースに生活感が出たことだ。それは、この国で長い間暮らした生活体験からくるものに他ならない。ブルースは生活を歌にしているからだ。 
 

これまで、多くの先達からエネルギーをもらって、それを吸収してきた。長い年月を経て、ようやくこのごろ、自分の中に貯めたものを発散できるようになってきた。 
 

この時点でまだやり残していることは何かと考えると、これまで、ブルース音楽のメッカであるシカゴに、住まなかったことである。実は30年前に、アメリカ移住を決意する前に、シカゴまで下見に行ったのだが、その時はそこに住みたいと思わせる強いモノがなかった。
 

僕が志向する伝統的なシカゴ・ブルースという音楽形態は、アフリカ系アメリカ人が生み出したものだが、それは今後もどんどん先細りして行くだろう。若手がそれを継承しないからだ。今にして思うと、少しでもまだ残り火がそこにくすぶっている間に、シカゴを経験しておかないと、自分に一生悔いが残るような気がしている。 
 

それにしても、このカリフォルニアの温暖な気候に慣れてしまうと、シカゴの冬は厳しいなぁー。 

(写真はシカゴのダウンタウン)

ワンマンバンドでブルースを録音する夢 

いい歳を過ぎてから、昼間の会社員の仕事を辞めて音楽をやっていると、自由で個人主義の強いこのアメリカでさえ、人から少しは珍しがられる。これが日本でなら、気でもふれたかと周りから心配されるだろうか。 
 

最近では、本業のギターもエレクトリック専門だけでなく、徐徐にスライド・ギターを含めたアコースティック・スタイルにも拡張し始めている 。 
 

さらに、日本に居た頃に少しかじったハーモニカは、この数年の間に経験を積んで、今ではステージでギターと同じ比重で活用している。 
 

その他にも昨年、ベースとドラムもやり始めた。初めてドラムのスティックを握ってその2ヶ月後には、ブルース・ジャムセッションでドラムを叩いた。今は、ファンクや4ビートなどのリズムも練習している。 
 

こうして異なった楽器を演奏することで、音楽に対する理解度が深まったし、自分の目指すバンド・サウンドがどういうものか、さらに明確になってきた。 
 

しかしこれでは、一日にいくら時間があっても足りない。好きなゴルフは時間とカネがかかるため、しばらくはお預けになっている。それに、だいぶん前に衝動買いしたキーボード、バンジョー、アルトサックスなどは、今は触ることも無く放ったらかしのままだ。 
 

思うに、楽器の力が身に付くかどうかは、その練習の集中力にある。最初のバリヤーを越えられるだけのワクワク感さえ自分にあれば、あとはそれを続けるだけだ。 
 

今は、いつかブルースのアルバムを、一人で全楽器を演奏して録音するという、戯(たわ)けた夢を見ている。 


人があまりやりそうでない、一見バカげたことを、ひょっとしたらやれるのではないかと、あれこれ思いを馳せるのは、もうそれだけで楽しい。
 

マーフィーの法則が当てハマる日 

 

英語に “マーフィーの法則 (Murphy's Law)” という表現がある。これは、“悪くなりそうな物事は、悪くなる”という、人に用心を促す冗談めいた言い回しだ。“法則”などと言えるシロモノではないが。 

  

昨日のライブは、そんな一日だった。 

  

先週から長く続く悪天候で、金曜日の夜というのになかなか客足が伸びず、しかも演奏中に曲の途中で、ギターアンプの真空管が飛んだ。こんなことは、初めてだ。 

  

さらに、セットの休憩時間中に、我々がステージから離れている間に、バンドへのチップ缶に手を突っ込んで、現金を盗もうとした奴がいたが、これは危ういところで防いだ。近頃は世間では、楽器や機材もよく狙われるらしいから要注意だ。 

  

おまけに、長雨のせいで山の木が倒れて帰り道のハイウェイが封鎖され、夜の10時にライブが終わったのに、家に着いたのは午前2時を回っていた。 

  

まあ、良かった事があったとするとそれは、予期しなかったアンプの故障で、初めてアコースティック・ブルースを人前で演奏したことぐらいか。これをきっかけに、ひょっとすると新境地を開いたかもしれない。 

  

写真は、昨夜使ってみた Odell 製 Vega という古いギター。1940 年代頃に作られたと言われている。



辞書だけではわからない、ブルースの歌詞の意味 


前回、Money, Marbles, and Chalk というジミー・ロジャース原曲のシカゴブルース曲について少し書いた。日本に居た頃に、僕が初めてスライドギターを覚えた曲だ。


しかし僕は、アメリカに来てから、この曲を演奏することはなかった。それは、このタイトルの意味がよくわからなかったからだ。 


Marble は子どものゲームに使う石で、道路にチョークで枠を書いて、小石を当てて枠から出したりするものらしい。これに大人が加わると、ゲームにお金を賭けるから、この3品が全て揃った、すなわち何でも持っているお金持ちのことをさすことになる。古い言い回しである。 


以前にどこかで、ジュニア・ウェルズ で良く知られるHooDoo Man Blues について少し書いた。HooDoo とは、古くは男が女をとりこにする魔力のようなものだ。そこに出てくる、hoodoo  the  hoodoo man と言う歌詞は、“hoodoo man を出し抜く”、つまり “スケコマシのスケをスケコマスこと” であると、昔のバンドメートのアメリカ人が言っていたのを思い出す。この友人自身がスケコマシを地で行っていたので、多分あっていると思う。 


他にもブルースには、一見して他愛(たわい)もない歌が、実は明らかにウラの意味があったりする。Help Me というサニーボーイの有名な曲は、直訳すると“全てを一人でやるのは難しいから助けて欲しい”という何の変哲も無い歌だが、前述の友人に言わせると、これは性交渉の歌らしい。 

  
僕は長い間、ジョン・ブリム のIcecream Manという曲は、単に、夏の暑い日にアイスクリームを売り歩く男の話だとばかり思っていた。が、先日知ったのだが、これは明らかにナンパの歌らしいのだ。”風味を取り揃えて、満足を保証します“というところが、いかにも怪しげだ。 

  
マディー・ウォーターズ のGarbage Man では、女に逃げられた男が、自分の元に帰って来てくれと、懇願している。が、ここでいう“家に帰ってきて、ゴミを回収箱に捨ててくれるだけでいい”と言う、“ゴミ”が何を指すか、もはや明らかになってくる。


 

シカゴ・ブルースのスライドギター(その3) 


このトピックで前2回にわたり、ギターのオープン・チューニングを用いたスライドギターについて書いた。


その1では、エルモア・ジェイムスのスタイルのオープンDチューニング、その2では、マディー・ウォーターズやロバート・ジョンソンのスタイルのオープンG チューニングについて簡単に触れた。 


しかし、スライドギターを弾くのに必ずしもオープン・チューニングが要るわけではない。 

   
例えば、The Aces の Money, Marbles, And Chalk という曲では、Louis Meyers がレギュラー・チューニングでスライドギターを弾いている。僕は昔、ブルースを演奏し始めた頃に、初めて覚えたスライドの曲がこれであった。 


他にも、Robert  Nighthawk の Bricks In My Pillow というアルバムは、レギュラー・チューニングの優れたスライド曲が幾つか入っているし、Earl Hooker の Blues In D Natural や Blue Guitar  などの曲でも、確かなプレーが聴ける。 


ところで、先日僕は、スライドギターを弾く目的で、ドブロ・ギターを購入したのだが、この種のギターでは、オープンG  チューニングがよく使われるようだ。ピッチを正確に、力強く太い音をスライドで出すまでには、慣れが必要だ。

 
思い起こせば、何年か前に、スライド用ではないが、フライング V ギターを買った時も、それを使いこなせるようになるまで、しばらく試行錯誤したものだ。ステージで場数を踏むのが一番の近道と考え、このごろ、自分のライブだけでは飽き足らず、あちこちのブルース・ジャムセッションに出没している。 


下の動画は、最近のライブより、オープンG のスライドを2曲編集しました。ハーモニカは大ベテランのゲーリー・スミス氏。



 

アコースティック・ブルースについて 


日本で高校生の頃にブルースにハマってから、これまではずっとバンドスタイルのエレクトリック・ブルースばかりやってきた。僕は今も、突っ込みの鋭い、派手なスクィーズ・ギターを得意としている。 

  
が、このごろ、戦前ブルースと呼ばれるものの中で、かつて深南部で栄えたアコースティック・ギターブルースを、その弾き方を意識して聴くようになった。ロバート・ジョンソン、ビッグビル・ブルーンジィー、タンパ・レッド、サン・ハウスなど、あげ始めるときりがない。30年以上も長い間聴いてきたシカゴブルースから、僕は今、さらにその源流 に逆上っているのだ。 

  
アメリカに引っ越してから観たプレーヤーでいうと、デイビッド・ハニーボーイ・エドワーズ、ジョニー・シャインズ、ロバート・ロックウッドJr  らがこのスタイルだ。 

  
そもそも、最近になってアコースティック・ブルースを聴くようになったのは、ハーモニカがきっかけだった。モダン・シカゴブルースハープの、ジュニア・ウェルズの音を追究しているうちに、彼がソニーボーイ・ウィリアムソンII  (ライス・ミラー) だけでなく、1930  から1940年代のソニーボーイ・ウィリアムソンI (ジョン・リー・ウィリアムソン)のカバーも多くやっていることを知ってからだ。 

  
たとえば、Check Up On My Baby, Early In The Morning, Stop Breaking Down, HooDoo Man Blues(元曲はHoodoo, Hoodoo というタイトル),  Good Morning School Girl, Cut That Out など。 

  
そこへ来て、偶然このごろ自分でも、ギターあるいはハーモニカとのデュオで演奏する機会が増えてきた。ベースとドラムが居るバンド形式で弾くギターに比べると、リズムセクション抜きでは、音が全く丸裸になる。歌いながらタイムをキープしつつ、ギターの音に厚みを出すのは、やってみるとこれがなかなか大変だ。 

  
ミシシッピー・デルタブルースは、土壌が肥沃で奥が深い。ここに足を踏み込むと、抜けられなくなりそうだ。そのうち、ブルースの弾き語りをソロでやってみるか。



シカゴ・ブルースのスライド・ギター(その2) 


前に、シカゴ・ブルースのスライド・ギターの代表格、エルモア・ジェイムスのオープンDチューニングによるスタイルについて書いた (シカゴ・ブルースのスライド・ギター(その1)を参照して下さい)。 
 

先日、以前から目を付けていたレゾネーター(ドブロ・ギター)を手に入れた(写真)。オープンGチューニングで、マディー・ウォーターズの I Can’t Be Satisfied (キーG) や Rollin’ and Tumblin’(第2フレットにカポタストをはめてキーA)が弾ける。 
 

オープンGチューニングは、低音弦から D G D G B D でレギュラー・チューニングの E A D G B E から、第6弦(E をDに)と第5弦(A をG に)、それに第1弦を(E をDに)それぞれ一音下げる。弦を押さえずに、開放弦のまま弦を全部、ジャラーンと鳴らしたときに、GのコードになるからオープンGだ。 
 

エルモア風のオープン Dチューニング(低音弦から D A D F# A D)との違いの一つは、オープンDチューニングでは、開放第6弦がルート(D) であること。それに比べ、オープンG チューニングでは、ルート(G)は第6弦ではなく、開放第5弦にある。したがって、低音弦のリフで厚みを出す弾き方は、両者で異なる。 
 

マディー・ウォーターズは、1940年代後半から既に、このオープンGチューニングのスライド・ギターを使って録音している。後にリトル・ウォルターのアンプリファイド・ハーモニカをフィーチャーして、マディーらがシカゴブルースのバンドサウンドを確立していった過程は、映画“ Cadillac Records” で観ることができる。 
 

ちなみに、スライド・ギターではないが、あのキース・リチャードもしばしばオープンGチューニングを駆使して、ストーンズのロックンロールのリズムギターの音を組み立てているようだ。