先月6月に行われた、シカゴ・ブルースフェスティバルを観に行く動機となったのは、メンフィス・ソウルのウィリアム・ベルが出演することを知ったからだった。1960 年代に活躍したソウルシンガーを、今この目で観れること自体が驚きだ。
フェスティバル初日のトリでメイン・ステージに上がったウィリアム・ベル氏 (写真)は、その年齢を全く感じさせず、緩急自在の曲運びで観客を酔わせた。特に、魂を揺さぶるように歌いあげるスローバラードには、目頭を熱くさせられた。パワフルなショーであった。
2日目のトリのビリーブランチ&SOB は、バンド結成40周年の祝賀イベントということで、ルリー・ベル、カール・ウェザースビー、カルロス・ジョンソンら歴代のスタープレーヤー達が続々と登場した。
特筆すべきは、そのレギュラー・メンバーの有吉須美人氏は、ピアニストとして高い評価を得ているだけでなく、ブランチ氏の右腕として長年にわたり活躍をしている。人種・文化・言葉の壁を超え、シカゴのブルース界から尊敬される業績を残したという意味で、僕にとっては、元ドジャースの野茂英雄投手と同じ次元にいる人だ。
最終日の朝一番に、小さめの野外ステージに出演したテール・ドラッガー&シカゴ・ブルースバンドも良かった。伝統的なダウンホーム・シャッフルのグルーヴ満載で、目をつむって聴いていると、ジミーリードのバックのサウンドを彷彿とさせるものがあった。
その他にも、頑固に昔のスタイルを固持しているのは、前述のルリー・ベルを始め、ジョン・プライマー、ウィリー・バック、メアリー・レーン、ハーモニカ・ハインズ、ビリー・フリン、ボブ・ストロージャー、ジミー・バーンズらか。その多くは、地元のクラブによく出演している。
僕は今回のシカゴ滞在を通じて、これらの伝統的なシカゴ・ブルースがまだ存続している間に、もっとシカゴを体感しておかねばという気持ちに強くかられた。(続く)