ブルース・ギターの話を少々。
シカゴ・ブルースのギターには大別すると、ベンディングを駆使したスクィーズ系と、ダウンホームなハーモニカ・ブルースのバックで弾く地味な “チロチロ系” の2種類がある。
スクィーズ系のブルース・ギターは、オーティス・ラッシュ、マジック・サム、初期のバディ・ガイに止どめを刺すだろう。突っ込みの鋭さとたたみかけるソロが特徴だ。今の自分のギターは、この3人の影響を受けたところが多い。
ダウンホームなスタイルでは、特に強調したいのは、ハーモニカを引き立てるギターには、特別な弾き方があるということだ。いわば伝統芸能とも言える。きょうびは、このタイプのギタリストは、希少価値がある。ロック系の爆音ギターでは、その雰囲気は出せない。
エディー・テイラーやロバート・ロックウッドJr を、僕はかつてよく聴き込んだ。他にも、ジミー・ロジャース、ルイス・マイヤーズ、サミー・ローホーン、ルーサー・タッカー、マット・マーフィー と職人肌のプレーヤーが多い。ハウリン・ウルフのバックのヒューバート・サムリンは非常に個性的だ。
バディ・ガイは、フロントマンとして前に出る時は、ぶっちぎれたように激しいソロをとる。が、ジュニア・ウェルズのバックにまわると、ハーモニカの合間を縫ってチロチロと陰湿感を醸しだす。両方のスタイルのツボを押さえているのだ。
ここで例として、これからダウンホーム・ブルースギターを研究される方々のために、アルバムを幾つかあげておく。
(1) The Aces “The Aces” -ルイス・マイヤーズのハーモニカをフィーチァーしたシカゴ・ブルースの名盤。一曲目のエディー・テイラーとフレッド・ビロウの、跳ねるようなシャッフルのノリはたまらない。
(2) Robert Lockwood Jr and the Aces “Japan Live” -ロックウッドJr とエイシズの日本ライブは、名盤の誉れが高い。僕は昔、学生の頃、このアルバムからよくギターをコピーしたが、今でもときどきそのフレーズがふと出てくる時がある。
(3) Junior Wells “Hoodoo Man Blues” -特に In The Wee Wee Hours で、ジュニアのバックでの、バディ・ガイのとことん抑えたギターは聴き物。
(4) Willie Williams “38 Woman” - 濃厚シカゴブルース・アルバム。ギターはエディー・テイラーとヒューバート・サムリン。中でも“Wine Headed Woman” のシャッフル・グルーヴは、前述のAce’s Shuffle 同様に絶品。
(5) Good Rockin’ Charles “Mr. Blues” -アルバム全曲を通じて、典型的なシカゴブルースの地味なバッキングが堪能できる。
(6) Little Willie Anderson “Swinging The Blues” -ロックウッドJr とサミー・ローホーンの渋いギター。
他にも、言うまでもなく、マディ・ウォ-ターズ、リトル・ウォルター、ソニー・ボーイ・ウイリアムソン、ハウリン・ウルフなどの古いところをあげ始めると、キリが無い。