音楽業界に居るハスラー達


バンドを長くやっていると、いろいろなミュージシャンや音楽関係者、あるいはそのまがい物に出会う。 
 

こちらが毎週レギュラーでやっているライブに、ゲスト出演させろと売り込んで来る者もいれば、ゲスト出演をこちらから打診しても断られることもある。ある歌い手は、出演予定日の前日になったら、忘れないようにリマインダー(思い出させ)の電話をくれと言ってきた。リマインドの必要な者が、いったいどうやって集客を図るというのだろうか。これらの場合、双方どちらかに思い違いがある。 
 

ライブのブッキングに関しては、親しい知人のクチコミの情報は信頼できるし、その恩恵にあずかった事もある。が、一般に第三者を介したブッキングは上手く行った例が少ない。出演条件が何処かでズレていたり、かりに出演までこぎつけても、客層が違ったりで、こちらの狙っている成果が得られない場合がある。 

 

まれにではあるが、ライブを入れた後で、出演日の直前になって出演条件を下げてくる店があるから、要注意だ。決め事を守るのはビジネスの基本であるから、その場合は今後のためにも、即キャンセルすることにしている。飛行機の便を変更不可の価格で予約した後でこれが起こると、迷惑極まりない。契約ベースの大きなイベントにでもなれば、こんなトラブルは考えにくいだろうが。
 

そもそもこの世界には、ハスラー的な人間がよく居る。口先ではこちらが聞いて喜ぶような話ばかりしておきながら、話が具体的にはそこから全く進まないか、あるいはうっかりその話に乗ると、とんでもない落とし穴が待っていることがある。
 

知り合いのミュージシャンから、こんな話を聞いた。はるばる州外(日本の距離感で言うと国外)にツアーに出かけて、あるクラブから出演料として受け取った小切手が、その発行者の口座残高が不十分なため換金できなかったとか。結局バンドのメンバーのギャラを自腹を切って払ったらしい。アメリカ人を持ってしてもこれだから、英語にナマリのある外国人(自分のこと)が、無事にこの商売で生きていくのは、並大抵ではない。 
 

それに、過去にバーの白人オーナーに人種偏見を思わせる不審な挙動が見えたとき、こちらから仕事をキャンセルしたことがある。自分自身が有色人種であるし、バンドのメンバーには黒人もいた。そんな所でブルースを演ろうとすること自体がナンセンスだろう。
 

おそらく、自分の知名度を上げようと努力する程に、それにつれて危険に出会うポテンシャルも増していくのだろう。インディペンダント・ミュージシャンとしては、信用できるのは自分の目と耳だけで、進むべき道を鼻で嗅ぎ分けて行くしかない。

 

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