日米でプレーするブルースの違いについて (その6)

日本とアメリカではそのミュージシャンシップは大きく異なる。僕はこの10年間に自分のリーダーバンドで仕事をしながら、パンデミックの間を除いて日本にも毎年ツアーに行って来た。

 

アメリカでは、コストパフォーマンスがまず先に来る。曲リストを前もって渡しておいても、メンバー全員が準備を家で充分やって来るとは限らない。要は、受け取るペイに対して、掛ける時間と手間の度合いが決まるのだ。特に小さいバーやレストランでやるような小規模な仕事はなおさらだ。

 

カリフォルニア州サンホゼ市で演奏していた僕のバンドは、レギュラーの仕事はいつもリハーサル無しで本番だ。曲の打ち合わせは全てメールで行う。サポートプレーヤーにとっては、どうせ安いギャラなら演奏はただ楽しんで終わればそれで良いのだろう。曲をスタートしてから、他のメンバーがその曲の構成を知らずに僕が失望したことは、これまで数え切れない。彼らには長期的な視野などあまりない。例えば週一で1年に52回続けていれば結構な実入りになるのに、全く行動が刹那(せつな)的である。

 

一方日本のミュージシャンは、いったん仕事を引き受けると準備をして来てくれることがまず期待できる。だからライブを終えた後の自分の満足度は、日本での方が往々にして高い。概して日本とアメリカでは仕事に対する倫理観が大きく異なるようだ。日米に関わらず、たとえその場のセッション的な演奏であっても、メンバー全員の息が合えば質の高い演奏をするのは全く可能である。それができてこそ、僕の気分は自然にハイになるのだ。

(続く)

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